最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)4361号 決定 1955年7月20日
本籍
広島市中島本町二三の一番地
住居
同市同町一〇二番地
無職
高橋慎一
明治二七年一一月二五日生
右の者に対する贈賄、収賄被告事件について昭和二八年七月一八日広島高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人今西貞夫の上告趣意について。
原判決の維持した第一審判決の確定した事実によると、被告人は特別都市計画法に基く広島市東部地区土地区画整理整理委員会の委員として、換地に関する事項その他同法所定の土地区画整理について工事施行者である広島市長の諮問に対し審議答申する職務を担当しているものであるが、判示の各日時に判示各場所において、鍋田外一名から同人等の各土地の換地等について斡旋等をしたことに対する謝礼の趣旨として判示各金品を収受したというのであり、右判示事実は同判決挙示の証拠によつて十分肯認することができるから、被告人はその職務執行と密接な関係を有する行為をなすことにより金品を収受したことが認められる。されば、原判決の判断は正当であり、論旨は、鍋田外一名が同人等の土地の買入や売却の斡旋をしてくれた謝礼として被告人に金品を交付したという事実を前提とするものであるから、原判決の認定に副わない事実を前提とする判例違反の主張に帰し、上告適法の理由にならない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)